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『希望が死んだ夜に』 天祢 涼

おすすめ:☆☆☆

この本を手にしたのは、裏筋もさることながら、表紙の写真によるものでした。
机に上げられた椅子の足を後ろ手に握って、何かを叫んでいる女の子の写真。
初めて目にしたときには、椅子の足を握りしめて俯いているものだと・・・。
どのシーンなのだろうか。
とても興味を惹かれました。



女子中学生の冬野ネガは、クラスメイトの春日井のぞみをなぜ殺したのか。
のぞみを殺したことは自供したものの、動機については決して口にしない。
ネガが半落ちにこだわるのはなぜか。

ネガの家は、母子家庭でその日食べる物に不自由をするほどの貧困に苦しんでいる。
しかし、親や元夫から虐待を受けてきたネガの母親はまともに働くことができないにもかかわらず、生活保護を受けようとはしない。

一方、春日井のぞみは吹奏楽部でフルートを担当。
周りにはいつも人が集まり、何の不自由もなく、楽しい中学生を送っている。

裕福なクラスメイトのことを逆恨みした女子中学生が起こした殺人事件として話が進んでいく。

推理小説ではあるのだが、貧困に翻弄させられている子供達、また、子供を巻き込んでしまう親達という社会問題とテーマとした小説でもあった。
といっても、推理部分がないがしろにされているわけではない。
なぞを解明していく警察がストーリーを邪魔するわけでもない。

とても魅力的な作品だった。
読了後すぐに紹介したい作品ではあったが、2回目を読むことを優先してしまったほどである。
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